トラウマとPTSD

心身に不調を起こす背景には様々なことがあります。

偏った生活習慣による栄養不良や貧血といったことが大きな要因となっていることもありますし、家族関係や学校での友人関係、職場などの人間関係のなかで起こるトラブルや傷つきが背景にあることもあります。

<トラウマとPTSD>

トラウマ(trauma)とは心的外傷のことをいいます。これは診断名ではありませんが、臨床心理学的あるいは精神保健学的な意味でのトラウマは、それを負った人の心身の調子を乱し、日常生活における行動や人間関係に影響を及ぼします。

PTSD(Post traumatic stress disorder)は心的外傷後ストレス障害のことをいいます。これは、ICDやDSMといった国際的な診断基準に含まれる診断名です。ただ、診断基準に当てはまらない場合でもトラウマの影響下に苦しんでいる人は決して少なくありません。

<トラウマの影響>

災害や事件、事故に巻き込まれた後、①再体験(トラウマ体験時の記憶が勝手によみがえる)、②脅威感(神経のたかぶりがつづき、体の状態をうまくコントロールできなくなる)、③回避(トラウマ体験を思いだすような状況を避け続ける)などが主症状としておこりやすいです。

また、長期にわたる暴力被害や、複数のトラウマ体験によって起こる複雑性PTSDの症状としては、上記3つの他に、感情の調節障害、ネガティブな自己概念(認知の障害)、対人関係の障害などがみられます。

また、トラウマの影響はその出来事が起きた直後ではなく、何年もたってから起こる場合もあり、困難を抱える当人に自覚されない場合もあります。さらにトラウマは家族にも影響します。たとえば、トラウマを負った人は家庭のなかで感情のコントロールができず怒鳴ったり、アルコールや薬物依存になったりすることがあり、家族もまた二次的な被害に遭う場合もあります。

現代では、トラウマは個人の問題ではなく、社会的、公衆衛生的問題だととらえられるようになっています。

<トラウマへの対処>

1)安全確保:現在安全が脅かされている場合はまずは安全確保が優先されます

2)知識:トラウマについて正しく知ること

3)専門家に相談

4)心理支援あるいは治療を受ける